健診機関から見た物資不足

上記は極めてマイナーな話ではありますが・・

現在進行形で生じている様々な物資不足ですが、間違いなく新型コロナウイルス関連です。まずマスク、そして消毒用のアルコールは市中のドラッグストアなどから一気に消えてしまいましたね。

ちなみに病院ではこれらの資材に関してはちゃんと備蓄があります。いざという時に内では困りますので、余るほどあるというわけではありませんが、必要とする数についてはちゃんと注文をすれば入れてもらえる仕組みになっています。病院の出入り業者もその辺りはわかっているのか、ちゃんと対応してもらえるので感謝しなければなりません。

実は以前あった感染症騒ぎの際、例えば鳥インフルエンザが広まった時期やMERSが流行した時期も現在と同じような状況はありました。この時もマスクは急な需要増に対応できずに全国的に欠品したのを覚えています。

感染症ではないですが、タイが洪水被害にあった際にはいくつかのメーカーが被災したこともあって、私の職場では検便(便潜血検査キット)の在庫が不安定になりました。そのような時にはかなりのストレスを抱えたものです。

以下は健診機関ならではの影響です。どのような思いでこうなったのかがわからないわけではありませんが、このようにして物資不足が生じているのかもしれないなと思った次第です。

1.取引先企業が健診機関に資材を確保させようとする

これは過去に実際にあったことです。

MERSの際も現在と同じようにマスクの需要が一気に高まり、どこを探してもマスクが見つからなくなりました。その時にいくつかの企業が健診機関に電話をしてきました。

「どこを探してもマスクが見つからないんだよ、病院なら買えるだろ?至急6000枚用意してくれ」

言い方が丁寧だったり威嚇的だったりと色々ありますが、こんな電話が毎日のようになるわけです。一般の病院なら何言ってるのだろうと断れるのですが、健診機関は対企業の取引があり、いわゆる営業担当者はその対応に責任を持っています。そのため医療機関向けに用意されている在庫の一部を一般企業に流すことが発生していました。

これもいわゆる転売ですが、価格はものすごく安いです。なにせ購入価格で渡すことになるのですから・・。こんな対応が初期にはありました。だからこそすぐに在庫が尽きて購入できなくなったのでしょうね。

断れば良いと言えば良いのですが、ここが営業担当者のつらいところです。用意しないなら他の健診屋に変えるよ?と脅しのようなことを言われることがあるのです。実際に自分たちもマスク用意してくれたら・・とか、インフルエンザのワクチンを用意してくれたら・・と持ち掛けられているわけですからある程度その気があるとわかるのです。言ってしまえば健診機関なんかどこでもよいという考え方もあるのです。モラルがないと思います。

マスクを要求する企業の担当者も上からどんな手を使っても確保しろと言われているのかもしれませんから、自分だけが成果を上げればよいという考え方が社会に蔓延しているのでしょうね。

ちなみに現在私の職場ではマスクの提供は一切行っていないようです。実際に提供できませんし、一部に優遇するわけにもいきません。買い占めのような行為がどれだけ迷惑をかけるかを考えると出来ないのです。

でも思うのですが、大病院の力のある医師がいる職場であれば何も言わなくても優先的に必要数を準備するとかはありそうですけどね。今もどこかで力によるマスクの確保と融通は行われているのでしょう。その影響が一般市民に出ていると思えてなりません。

ちなみにMERSの際に調達したマスクは、その約半数が企業に引き渡さずに終わりました。思っていた溶離も早くに収束したので先方からいらないと言われたのです。注文しておいていらなくなったら気軽にキャンセルするなど言語道断ですが、実際にそんなことがありました。その影響で私の職場は6年分のマスクの在庫を抱えることになったわけです。こんなことしているから在庫不足になったのかなと思ってしまいます。

2.一般企業が自分のところの在庫を確保させようとする。

これはタイの洪水の際の便潜血キットの時と、鳥インフルエンザ及び豚インフルエンザ流行の際に話題になりました。

便潜血キットは大腸がん検診で使うキットであり、人間ドックにはほぼ含まれますし、協会けんぽの一般健診でも含まれる検査なので需要が高かったのでタイの被災により大きな影響を受けてしまいました。そのため影響のあった業者さんは相当に苦労したようです。全国の医療機関から催促され、迷惑をかけないように必要数を聞きながら分配していたようです。

それでも顧客の要請というのは激しく、2か月先の健診の資材を一括で提出するように要請して来たりするケースもあったのです。特に官公庁の住民健診で多かったです。事情は分かってくれているはずなのですが・・・。

その様な際に資材不足で検査が難しくなるなか、取引のない業者から「うちに乗り換えてくれたらすぐに提供しますよ?」などという営業を受けたりもしたようです。私が知る限り納品業者さんが感情的に怒ったのはその時くらいでしょうか、それほどまでに仁義に反した行為だったようです。

何が言いたいかというと、競争があるって怖いなということです。私はこれを経験してからは災害系の物資不足には寛容になってしまいました。それでも何とかしろという上司に楯突いたこともあります。そんなことをしても意味はないのですが・・。

あとは鳥インフル、豚インフルの際に、自分のところの職員用のタミフルを確保せよと言ってきた企業があってびっくりしました。その容貌の一部は聞き入れ、いざという時のための備蓄として保管していたのですが、結局1錠も使わずに廃棄したのはショックでした。世界のタミフルの大半を日本で消費しているという背景にはこのような問題もあるのでしょう。

今はもうこんなことはありませんが、当時は企業が薬剤確保のための資金を出すことを条件にしたにもかかわらずいくつかの会社は対応してきました。これが危機意識というものなのでしょうか。物資不足になるのがわかっているので先に確保するのですが、そのことによって物資不足が発生するというのは興味深い話です。信用してないんでしょうね。

3.いらなくなったら断れば良いと思っている

インフルエンザワクチンの不足はもはや毎年のことです。必ずと言ってよいほど不足が生じ、最終的には余るのです。一般の病院であれば在庫のある限り先着順に売っていくだけですから問題ないのですが、健診機関はあらかじめ日にちを決めてその日に必要数を確保しなければなりません。

業者も毎年分配に苦慮する様で、指定の日に指定の数を納めるということに対応できていません。そんな事情は一般企業の担当者には関係ありませんから、この日でやれと強く言ってくるわけです。無いものはないのですが、これが健診機関の営業担当者にとっては大きなストレスです。外部要因なのでどうしようもないのです。

とは言え、無い無いと言っているワクチンがすぐそばの大病院で受付中だと説得力がないのも事実なのです。ワクチンは間違いなく「医師力」で決まっているように思います。影響力の強い医師がそこにいるかどうかで業者の対応は変わってきます。これは仕方のないことなんでしょうね。

そして、優遇されなかった会社は不満から別の健診機関に「インフルエンザのワクチンを用意できるなら乗り換えてもいいよ」と持ち掛けてきたりします。チャンスのように見えて、そういうことをする会社という側面もあったりしますので気を付けるべき内容です。一般に健診機関は臨床の現場よりも力は弱いです。だって薬をあんまり買わないのですから・・。

あとはインフルエンザのワクチンは余ったら業者に返品することが出来るという慣習があるのですが、それをすると当然最終的にはごみになります。そのためシーズンオフに向けて在庫が充実してくるというわけのわからない問題が生じるわけです。

健診機関で予防接種を希望する会社も予定人数を明確にするなんて稀です。当日の体調不良は例外としても、かなりいい加減なケースが多いです。在庫管理が必要なのではっきりしてくれないと困るのですが、インフルエンザはあくまでも個人の責任でやっているのでそうなってしまいますね。

以上、この様な仕組みで健診機関の物資不足問題が発生したりしました。

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