騒音の健診って必要?

うるさいのはわかって働いているんだけど・・

こんなことを言う方がいました。騒音の健診と言うのがありまして、工場などの製造業の現場では行っているケースが少なくありません。これは法律で義務付けられている定期健康診断で要求されている聴力の検査をより細かく検査するというものであり、検査を提供する側としては検査費を上乗せで頂戴しております。世の中無駄な経費を削減するのが潮流ですので、健診の世界でも無駄が探され始めています。

結論から言うとこの騒音の健診は特殊健康診断の中でも「指導勧奨による特殊健康診断」に位置付けられています。その特徴についてしっかりと理解をしてどうするのかを決めてもらうようにするのが一般的な流れです。医療機関側の私の仕事としては世の中の仕組みとメリット、デメリットの両方をお伝えすることになります。

騒音の健診の内容と目的

工場の中の環境は会社によって違いますが、すぐ近くにいる隣人と会話が出来ないほどの騒音環境で働いている人もいます。その様な人が聴力障害にならないように健康管理をする義務が会社にはあるのですが、難聴を始めとする聴力の状態を把握するために行うのが騒音の検査です。

通常の健診における聴力検査よりもかなり細かく調査をしますので、作業上の影響がより詳しく判断可能です。この騒音の健診を行うことにより、聴力異常をいち早く確認して適切に対応するというのがこの騒音健診の目的です。

騒音健診を実施しないとどうなる?

ここをポイントにする人も多いでしょう。

一般の健康診断の場合には義務として位置づけられていますので対応しなければなりませんが、指導勧奨による特殊健康診断は罰則がないのが特徴です。つまり実施しなくても何かしらのおとがめを受けることは無いのです。

この話を聞くと多くの人が「じゃあ、やってもやらなくても良いのか」と言いますが、ちょっと待ってください。どっちでも良いのであれば何故騒音の健診などと言うものが存在しているのでしょうか。医療機関側としてはここをしっかりと説明する義務を持っていると思っています。

まず大切なのは、行政としては騒音の健診を実施することを産業の現場に指導しています。健診をすべきですよ・・と。これが指導勧奨と言う言葉に意味になります。だけど実施しなくても罰則はないよとも言っています。何ともわかりにくい話ですが、以下のケースを想像して見て下さい。

<事例1>

長年工場勤務をしてきたが、最近になって急速に耳が聞こえにくくなってきた。生活にも支障が出るようになり病院で治療を受けるようになったが、なぜこんなに悪くなるまで何もしなかったのかと言われた。会社の仕事が工場なので日常的にうるさい環境の中で働いてきたことを話すと、医師から会社の対応が良くないねと言われた。

上記は今考えながら適当に描いた架空の事例(制作2分)ですが、この様なやり取りがあった際に会社で騒音の健診と事後措置をやっていたか、やっていなかったかでは大きな違いがあることが予測できるでしょう。

行政としては指導勧奨と言う形で「騒音の健診をやったほうが良いよ」と明確に言っています。罰則がないだけで行政は注意喚起しているのです。それを企業側が無視して健康被害が生じ、その矛先が会社に向かった場合、会社の安全配慮義務が問われることになりかねません。

聴力障害を生むような環境は一般的には職場に限定されるのが普通です。そのため会社としては国が求めることをやってこなかったために聴力障害が生じたと言われたら、健診の実施と事後措置による対応だけが安全配慮に取り組んできた証拠になり得ます。こういった仕組みになっているということを意識しておいた方が良いでしょう。この様な健診を実施しないことはしっかり健康管理をしているという証拠を残せないことにつながります。これは大きなデメリットですね。

指導勧奨は罰則がないだけで責任が無いわけではありません。従業員の健康管理に対してしっかり対応しているということを対外的に示すためにも必要な活動であるということをメリットとして説明しています。それでもコストを削減したいと言われる場合もありますが、安全配慮義務は会社側にあるということをしっかりと意識した方が良いでしょう。医療機関側から説明がなかったでは済みませんよ。

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